運命のヒト

オーナーさんが傘を譲ってくれると言うので、お言葉に甘えることにした。


シロが傘立ての中から古そうなものを選んでいる間、あたしはそっとオーナーさんに尋ねた。

「あの……」

「ん?」

「さっき、幸せだったと仰いましたよね? どうやったらそんな風に思えるんでしょうか」


あたしには、わからない。

別れの先にまた笑える日が本当にやって来るのか。

シロを失って、記憶すらもやがて消え、あたしは再び立ち上がれるんだろうか。
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