桜、雪、あなた
「改めまして乾杯!」
「はいっ!ある意味初めまして乾杯ですっ!」
「とりあえず何か頼もうぜ」
「はいっ!!」
賑わう店内。
薄暗いライトの照明でキレイに並べられた小物たちの影が揺れる中、
抑えたボリュームで流れるBGMが心地の良い
今、巷で流行りのダイニングバーにて。
「あ、これうまそ」
独り言を呟きながら
メニューを真剣に眺めている彼、ヨウスケくん。
ーと、
そんなヨウスケくんと向い合わせに座る、あたし。
ちなみに、彼氏 なし。
(ちーーーーーん)
「しっかし偶然だったよなー」
「はい、びっくりしましたよー」
そうなのだ。
つい1時間前に仕事が終わって
『明日休みだけど予定ないし、ちょっと一服でもしてから帰ろうかな』
と、
仕事帰りにあたしがふらりと立ち寄った喫茶店で
「「…あ。」」
偶然 ヨウスケくんに会って
「お疲れ様ですー」
「おぅ、お疲れー。何、今仕事終わったの?」
「はい、そうなんですよー…」
「「…て、……あ。」」
これまた
偶然隣の席になって。
それで何となく
どーせだから相席しちゃおっかってなって、
何となくその流れで
明日お互い休みならメシ食いに行くかってなって、
何となく
行っちゃいますかってなって。
こうして現在に至っている、 わけで。