桜、雪、あなた



だけど。
いざこうしてヨウスケくんと向い合わせで座ってみると

『だめだっ 緊張するっ…!!』

あたしは
この状況に どうすればいいのか全くわからず
カチコチに緊張してしまっていた。



「つーかミオちゃん緊張してるだろ?」

「…げ。バレました?」

「おぅ。だってなーんかそわそわしてるし」

「いやっ…まぁ、ははっ…はぁ」



あぁぁぁぁ〜

そりゃそーだ。
緊張、しないわけがないんだ。

だってそもそもヨウスケくんとあたしの関係はと、言うと。

働くショップはそれぞれ違うけれど
同じビルの館内で働いるかれこれ5年位のお付き合いになる言わば、

“テナント仲間”

ってヤツで。

館内で会ったら軽い会釈やどーでもいい軽い世間話をする程度の友達でも何でもない
顔見知り程度の間柄、なわけで。

もちろん
お互いの名前以外携帯の番号だって知らないし、
唯一知っていると言えばたまに喫煙室で会う時にヨウスケくんが必ず吸っているタバコの銘柄、位で。

だ・か・ら。

誘いに乗ったあたしが言うのもなんだけど
こんな風にご飯に来るなんて夢にも思ってもいなかったし、

(ヨウスケくんが先輩だから断れなかったっていうのが正解だけど)

職場以外でこうして向かい合って会話をしているのだけでも
すごく不思議な感じがして

…と、
言うか。

正直な所どう接すればいいのかわからなくて。

ただでさえ人見知りなあたしは
緊張をタバコで紛らわす事しかできないでいた。


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