桜、雪、あなた



「それだけ?」



聞き返しながらあたしはヨウスケくんに心の中で

嘘。

と、
言った。



「うん、それだけ。」



嘘つき



「嘘。」



今度は声に出して言った



「嘘じゃないよ、それだけの事」



嘘つき。

だって、だってその顔見たの
二度目 だったから。



『この手の話苦手なんだよ』

『おれの恋愛話』



あの時
車の中で話していた時と同じ顔をしてるから。

あたしが前に見た事のある同じ切なそうな 顔してるから。



「………」



あたしはどんな言葉で返したらいいのかわからなくて、でも。



『それだけ』



この、一言の言葉の重さが
ヨウスケくんの思いの重さだと嫌な程伝わると同時に

あたしの胸の奥が

チクリ

と、
痛んだ。




ふたりの間に流れた沈黙がやけに長く感じた。





「……だけど」

「うん」

「だけど、たったそれだけの事で おれ、は」

「ん、」

「きっと前に進めてないでいるんだ」

「…うん」



あたしは



「悪りぃな、変な事言って」



……あたしは…



「うーうん!ぜーんぜん!!」



ヨウスケくんの昔は知らないから、
だから仕方 ないんだけど

その言葉を聞いた 瞬間



「高校に行ってた時の1つ上の先輩だったんだ」

「そうなんだぁ!」



チクリ

と、
また胸が痛くなって



「一目惚れでさ」

「えー!!ヨウスケくんが?!」



どうしようもなかった。



「意外だろ?」

「うん!すごく!!」



…泣きたくなって



「本当、すげーすきでもうこれが
“最後の恋愛だ!”って本気で思ったんだ」



どうしようも、なかった



「…そ、そうなんだ」







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