あなた色に染まりたい
「……」


「……」




静かになった部屋の中。


頭がズキズキと痛むのに、それでもあたしの脳内は、大輝のプロポーズのことでいっぱいだった。




「頭が、痛い……」


「大丈夫か?病院に行く?」




独り言を呟いたつもりが、すぐ横から大好きな声が響いてくる。


でも……




「蓮、無理しなくてもいいよ。あたし、蓮に嫌われるようなことしちゃったし、もう……帰っていいよ」




涙があふれてきた。


ホントは“帰っていい”なんて少しも思っていない。


傍にいてほしい……


だけど、昨日のことを考えると、これ以上嫌われたくないという思いが脳内を占領して、こんなことを口走ってしまった。




「紗羽、誤解してる……俺、紗羽のこと嫌いになってねぇし、離れたつもりもねぇよ」


「でも昨日……」


「あれは……紗羽にひどいことしそうだったから。俺、自分で自分を止められる自信がなかったから」




蓮は、苦しそうな表情でそう言うけれど……


ひどいことって何?


何を止める必要があるの?


蓮の考えていることが全くわからず、蓮の瞳を真っ直ぐに見て、次の言葉を待った。


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