あなた色に染まりたい
「さ、行こっか?」




そう言って、蓮があたしの手を握り、そのまま歩き始めたけれど……


あたしの視線は、なかなか袋からそらすことができない。




うー、気になるっ!


あのパンパンに膨らんだ袋の中身はなんなんだっ!?


蓮は『あたしが大好きなもの』と言った。


はたして、これから行く場所で必要なあたしの大好きなものって、いったいなんなんだろう。




これから行く場所……


それは、お花見。


しかも、夜桜を見に行く。




一昨年までは、大輝に裏切られた出来事のせいで、桜を見ると必ずと言っていいほど、涙を流していた。


そんな出来事から二年後に蓮と出会ったおかげで、昨年は蓮と一緒に五分咲きの桜を、笑顔で見上げることができるようになった。




そして……


蓮と見る夜桜は、今日が初めてなんだ。
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