あなた色に染まりたい
「それで、付き合い始めたんだ?」



あたしが言う前に、蓮がその言葉を口にした。



「うん、あたしも彼のこと好きだったから……この時期の飲み会自体が嫌な思い出ってわけじゃないの。彼と過ごしたことを思い出すのが辛いんだ。幸せだったことも、今は黒い過去にしか思えない。」



“幸せだったこと”……



口にしたことで、そのときのことを思い出して涙があふれてきた。



幸せだったはずなのに……



今は“黒い過去”としか思えないなんて……





蓮はいつのまにかあたしの横に座っていて、あたしの肩に腕を回して引き寄せた。



そのまま、吸い寄せられるように蓮の胸に顔をうめると……蓮はギュッと抱き締めてくれた。





結局、あたしは蓮に甘えてる。



蓮はあたしのことを好きだって言ってくれてるのに、あたしはこんな中途半端なことしてて……



こんなのいけないってわかっているのに――…


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