恋の魔法と甘い罠
「とりあえず行ってみるか?」



そう言う和泉さんに「はい」と言ったあと、そういえば……と口を開く。



「あたし、この間飲み逃げしちゃったから、近いうちに行かなきゃって思っていたんです」


「飲み逃げ?」


「はい」



あのとき、いつの間にか寝てしまって、気付いたら和泉さんのアパートにいた。


確か3杯は飲んだはずなのに、お金を払わずに出てきてしまったのだ。


だけど、



「俺、出しといたから」


「えっ」


「だから飲み逃げじゃねぇよ」


「……は?」



すぐにその意味を理解できなくて、眉を寄せながら和泉さんを見上げる。


そしたらまた、ぷっ、と吹き出して「やっぱりおもしれぇ」と言って笑った。


そしてちょうど通りかかったタクシーに二人で乗り込んだ。
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