恋の魔法と甘い罠
そんなことを考えているあたしをよそに、和泉さんは奥の方を指差して



「あの席、頼みたいんだけど」


「ああ、もうしばらくしたら空くんじゃないかな。空いたら案内する。とりあえずカウンターでいい?」


「ん、サンキュー」



そう言った和泉さんは、そのままカウンターの方へ足を進めた。


あたしもそのあとを追って、和泉さんが座った席の隣に腰を下ろした。


とりあえず和泉さんはビール、あたしはカクテルを注文する。


すぐにやってきたそれを、ぐいっと一気に半分くらい飲んでグラスを置くと、隣から視線を感じたから顔を向ける。


そしたら、眉を潜めている和泉さんの姿が目に飛び込んできた。



「な、なんですか?」



今そんな表情をされる意味がわからなくて訊いてみると、予想外の答えが返ってきた。



「あんまり飲むなよ?」


「えっ」


「話す前に潰れたら困る」



一瞬、なるほど、と思ったけれど、実際はまだ一杯目で、何でこんなことを言われるんだろうと今度はあたしが眉を寄せる。
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