恋の魔法と甘い罠
だけど和泉さんはそんなあたしにやさしい声で話しかけてきた。



「涙は止まった?」


「……はい」


「そっか……少しはすっきりした?」


「……はい」


「それならよかった」



そう言って頭をやさしくぽんぽんと撫でる。


その仕草に、その柔らかい声音に、どきんっ、と心臓が跳ねた。


そしてあたしの頭に乗せられた手が、そのままジョッキを掴んでビールを飲んでいる気配を感じながら、顔を伏せたまま視線だけを上げて隣に座る和泉さんを盗み見る。


そしたらゴクゴクと喉をならしながらビールを煽っている姿が目に飛び込んできた。


和泉さんって、ただそれだけの仕草にも色気を感じてしまうほどカッコイイ。


なんて思いながら、いつの間にかじっと見ていたらしく……



「ん? 何?」



とこっちに視線を向けてきた。


盗み見たつもりが、和泉さんはちゃんと気付かれていて、



「いえっ! 何でもないですっ!」



慌ててそう口にすると、和泉さんはふっと微笑んだ。
< 119 / 357 >

この作品をシェア

pagetop