恋の魔法と甘い罠
『事実を受け入れる』



それは、慎也さんに奥さんがいて、自分は失恋したんだという事実。


何より心の中で“体だけの関係なんじゃないか”とずっと疑問に思っていたことの答えが出たから……


慎也さんがあたしに接してきていた態度に妙に納得してしまったから……


あのとき目の当たりにしたものが真実なんだ……と認めざるを得なかった。


だから、結果的にその事実を受け入れていた。



だけど、和泉さんの今の言い方――



『コイツはちゃんと泣けるんだって……』


『泣くってことは、ちゃんと事実を受け入れようとしていたからだろ?』



それって……涙が一滴も出てこなかったと言った和泉さんは、まだ受け入れられないってこと?


ちらりと和泉さんの方へ視線を向けると、さっきまでこっちに向いていた真っ直ぐな瞳はずっと遠くにある何かを見つめているように見えて……


その姿が凄く儚げに見える。
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