恋の魔法と甘い罠
記憶にない夜の飲み代から始まって、一緒にいるときのお金は一切出していないあたしにとってそれは凄く困ることで。


そんな気持ちが顔に出ていたのか、



「そんな顔するなって」



そう言って右手で挟むように両頬を、ぎゅっ、と掴んできた。



「うっ」



思わず漏れてしまった間抜けな声に、和泉さんはくくっと笑いながら、今度はあたしの耳の方へ口を寄せてきて、



「こんなところで金を出すなって。『付き合ってます』アピールができねーだろ?」



なんて、囁くようにそう言ってきたけれど……


あたしはその言葉よりも、耳に息がかかるほどの近さに和泉さんがいることに、カッと顔が熱くなった。


慌てて距離をとろうと顔を離すと、



「その反応、すっげーいいわ」



和泉さんはそう言ってまた笑い始めた。
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