恋の魔法と甘い罠
慌ててそらしたけれど、やっぱり慎也さんを見ると胸が痛む。


すぐに忘れるなんて無理だとわかってはいた。


だけど自分の想いがほんとに何も変わっていないという現実を目の前にして、溜め息が漏れた。


顔をあげることができずにそのまま俯いていると、強い視線を感じる。


周りの目もあるから、この場で声をかけてくることはないだろうけれど、この状況、凄く落ち着かない。


早く和泉さんが戻ってきてくれないかなと顔をあげると、レストランのウェイターのように軽々と両手に料理の乗ったお盆を持ちながらこっちに向かって歩いてくる姿が見えて、ほっと息をついた。


そのまま「はい、Aランチ」と言いながら前にお盆を置いて席についた和泉さん。



「ありがとうございます」



そう言ってお金を渡すと



「いらねぇって」


「えっ」



またもや断られた。
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