恋の魔法と甘い罠
マスターはバツが悪そうな表情をした和泉さんを見ると、満足そうに笑いながら奥の調理場の方へ入っていった。


その背中を見送っていると、和泉さんは小さく息を吐いてあたしの方へちらりと視線を寄越す。



「わり。ちょっと暴走した」


「いえ」


「でも……」



そう言って言葉を止めた和泉さん。


いつまで経ってもその続きを言わないから、あたしの方が気になってつい訊いてしまった。



「でも……何ですか?」


「ん、でも……俺はそういう意味で言ったんじゃなくて……」



そういう意味?


よくわからなくて首を傾げる。



「前に一晩一緒に過ごしたとき、俺、マジでよく眠れたんだよ。普段はちょっとした物音でも目が覚めるのに、玲夢が出ていったことに全く気づかなかったんだ」



目覚めたら和泉さんに抱かれていたあのとき、確かに和泉さんはぐっすりと眠っていてぴくりとも動かなかった。
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