恋の魔法と甘い罠
そしてそこで話が終わってしまえば、ここは人気のない場所だから物音ひとつしない。


こんな風に会話がなかったら、どきどきと音をたてているあたしの鼓動が和泉さんに聴こえてしまいそうで、なにかしゃべらなければ、と慌ててしまって出た言葉。



「他に、好きな人ができました」


「は?」


「あ……」



あたし……今、何て言った?


大きく音をたてているどきどきを消すために、気づいたらあたしは今言わなくてもいいようなことを口にしていた。



「好きな、人?」


「……」


「課長じゃなくて?」


「……」


「玲夢?」


「……」



さっきまで必要以上にしゃべらなかった和泉さんが次から次へと話しかけてくるけれど、何も返せなくて。


そしたら、俯いているあたしの顔を覗き込んできた。
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