恋の魔法と甘い罠
和泉さんにちらりと視線を向けると、真っ直ぐにこっちを見ている瞳とぶつかる。


それが、思い出しているよな? と訊いているようで、すぐにそらしてしまった。



「ごめんなさい。何も思い出せていないです」



断片的にさえ記憶にないからほんとに申し訳なくて、無意識に体を縮こませる。


そんなあたしに和泉さんは大きく息を吐いた。



「思い出したら、すっげームカついてきた」


「えぇっ!?」


「あんときの玲夢、ずっと俺のことを課長だと思ってたんだぞ。あー、ムカつく!」


「……」



そういえば前にもそう言っていた。


けれど、あのときの記憶が全くないから何も返せる言葉がなくて。
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