恋の魔法と甘い罠
そんなことを考えている間に、いつの間にか慎也さんがやって来る時間になって。



ピーンポーン……



と部屋中にインターフォンの音が鳴り響いた。


会えるという嬉しさと会ってはいけないという苦しさが入り交じってしまったせいか、心臓がどきどきと大きな音を上げる。


その場所をぎゅっと押さえながら、鍵を回してドアを開けた。



「お疲れ様でした」



いつもの癖で、自然と口から飛び出してきた言葉。


慎也さんはそれに短く「ん」と言って、中に入ってきた。


ネクタイを緩めながらソファーに腰かける姿を見て、さっきよりも心臓がどきどきと大きく鳴り始める。


こうやってあたしの部屋にいる慎也さんは全く違和感がなくて、いつもと同じように見える。


だけど慎也さんに奥さんがいることは事実で。


やっぱり確かめるべきなんだろうか。


ていうか、確かめるまでもない。


だって昨日はっきりとこの耳で聞いて、この目で見てしまったんだから。
< 44 / 357 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop