恋の魔法と甘い罠
どうしよう……。


そう思いながら、ふっと視線を逸らした先で目に飛び込んできたもの……



「あ」


「ん?」



慎也さんのその声を背に、ゆっくりと立ち上がってその場所へ向かい……



「これ」



腕時計を手に取って、そのまま慎也さんに手渡した。


それを見た瞬間、慎也さんはほっとした表情を見せた。そして――



「ああ、ありがとう」



やさしくそう言って、あたしの手首を掴んできた。


そのままその手に力が入って、ぐいっと引っ張られて……



「ひゃっ!」



慎也さんの胸の中に飛び込むようにおさまってしまった。



「し、しんやさっ……」
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