恋の魔法と甘い罠
そんな慎也さんを視界に入れながらも、気になることがあった。


それは和泉さんがあたしの名前を呼んだこと。


しかも「鮎川」ではなく「玲夢」と。


あたし、名前を教えたっけ?


あたしは和泉さんとは違って、誰にでも知られているような有名人ではない。


もしかしたら、記憶にないあの日に教えたのかな?


でもだからって、ほとんど話したことがない人に「玲夢」って呼ばれると、吃驚してしまう。


そんなことを頭の中でぐるぐると考えていたけれど、ふと我に返る。


だってこの状況、あたしとの関係を秘密にしたい慎也さんにとってはかなりヤバいんじゃないの?


和泉さんは、慎也さんが大切にしている腕時計をあたしが持っていたのを見ているし、『課長はやめておいた方がいい』と言ってきたから、慎也さんとあたしがそういう関係だということに気付いていると思う。


だけど慎也さんは……。


いつの間にか和泉さんに向けていた視線を、ちらりとだけ慎也さんへと移す。


相変わらず眉を寄せていて、とても不機嫌そうに見える。
< 63 / 357 >

この作品をシェア

pagetop