【完】短編集~幼馴染み~
静かな、空間。
「…莉紗」
それを破ったのは、由貴だった。
「…ん?」
「…震えてるじゃん」
由貴はあたしと向かい合わせになる。
「…泣いてんじゃん」
そっ…と、あたしの頬に手を添える。
ビクッと、震えた体。
由貴はぎゅっとあたしを抱き締めた。
「っ、ゆ…き…?」
「喋んなくて、いいから」
さらに、強まる力。
我慢していても流れていた涙が…加速する。
「ぅ…っ、ヒック…こわ…かったよぉ…!!ぅぁ…っ…」
「来るの、遅くなって…ごめん!!」
「ふ…ぅぅ…由貴ぃ…」
違う、由貴が、悪いんじゃ…ないんだよ。
由貴が来なかったら、どうなっていたか――…。
由貴の腕の中は…
とても、温かくて…
心地良かった。

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