偽りの恋人
「…失礼します。 先程の書類、修正終わりました」
「あぁ、お疲れ様。確認して、また何かあったら明日返すから。今日はもう帰っていいよ」
「ありがとうございます、お先に失礼します」
「お疲れ様」
結局終業時刻から1時間以上かかって仕上げた書類を課長に手渡すと、にこり、と相変わらず胡散臭い笑顔を私に向けながら受け取られた。
背筋がぞっとする。
私に向けて笑わないでほしい、得体の知れない笑顔で寒気がするから。
…とは、もちろん言えないけれど。