セックス·フレンド【完結】
「もしも、本当にあたしを選ぶつもりだったなら、竹内さんがアパートを出た時点で、あたしを恋人にしても良かったはずよ。でも、隆也はそうしなかった」


「それは…気持ちの整理が…」


「整理って?あんなにあたしをたくさん抱いたじゃない?」


「それは…」


「セックスはできても、恋人にはできなかった。アパートに招くことさえ…」


「…」


「それは、つまり、竹内さんの居場所を、きちんと確保しておきたかったからよ。体は許せても、心までは許せなかった。どんなにいいことを言っても、結局、隆也は竹内さんのいた場所に、あたしを置きたくはなかった。そこにあたしが入りこむ隙なんか、なかった」


一つ一つ言い当てられるたびに、「違う…」と否定した隆也の声が弱々しくなっていく。


それは、つまり、違わないということ。



「子供がてきたから結婚するんじゃない。きっと子供ができなくても、隆也は、竹内さんを選んでいた」


「…」


いよいよ確信へ迫ると、隆也は否定すらできなかった。


「あたしには、わかるの」

「…どうして?」


「だって…」


そこで、あたしは再び言葉をつまらせた。


「隆也が竹内さんを見つめてきたのと同じように、あたしも隆也を見つめてきたんだもの。大好きだったんだから、本当に。大好きだった…」


愛は、はじけた。


大好きだった。
愛してもいた。


でも、もう届かない。


こんなかたちで、どれだけ隆也を愛していたかを伝えることになるなんて、思わなかった。
< 264 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop