セックス·フレンド【完結】
「ごめん」


繰り返し、ごめんと謝りながら、隆也は泣いていた。


それが、隆也の返事。出した答えなのだ。


「ねぇ、隆也?」


「あぁ…」


あたしは、涙声の彼に聞いた。


今さら聞いても仕方のないこと。


でも、聞かずにはいられなかった。


「もしも、あの時…」


なんて、未練たらしいのだろう。


こんなことを口にしてしまう自分に嫌気が差す。


でも、笑って許して終われるほど、あたしは、いい女に成長してはいなかった。


それは、まるであの頃から変わらない。


ねちねちと、嫌みったらしい、イヤな女。


「六年前のあの日、あたしがあんなことをしなければ…」


電話の向こうで、隆也が息を飲むのがわかった。


「今、隆也の隣にいたのは、あたしだったのかな?」


「それは…」


プッ…
ツーツー


虚しく響く切断音


隆也が何か言う前に、あたしは、電話を切ってしまった。
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