セックス·フレンド【完結】
「ま、いいよ。俺には美杉がいるから」


後ろから隆也に抱きしめられたとき、あたしは、「なら恋人と別れて」と危うく言いかけた。


「またまたぁ、そんなこと言って、別れる気なんかないくせに。愛してるんでしょう?彼女のこと」


たくましい隆也の手をふりほどき、彼と向き合う。


隆也の後ろは、ちょうど一面鏡ばりで、振り向いたあたしは、鏡の中に映ったあたしと目があった。


あたしは、とても怖い顔をしていた。


口元が歪み、目が凄んでいる。


まずいと、とっさに隆也を見たが、彼はぼんやりと天井を仰いでいて、あたしの顔の変化には気づいていないようだ。


ほっとしたのもつかの間、付き合っていた頃、隆也はこんな風にぼんやりとすることはなかったと切ない気持ちになる。


隆也は、いつもあたしを見ていた。あたしの細かい仕草や表情の変化に敏感だった。


やっぱり、今、彼の心を独占しているのは、恋人なのだ。
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