甘い罠
「感触と匂いを、はっきり覚えてるんだ…」

「匂い?」


「女の人だったと思う」

木村は真っ直ぐ瑠璃を見つめて言った

女?
瑠璃は意外だった

なんとなく、説明はつかないのだが、杉山だったんじゃないかという疑惑を持っていたのだ


「甘い…
香水かな?
そんな匂いがした

あとぶつかった時の感触…
あれは女の人だった

何故か、それだけははっきり覚えてるんだ」


「顔は?
顔は見なかったんですか?

髪型とか…」
瑠璃は身を乗り出した

木村は俯いて首を振る


「でも…

それなら絶対警察には話した方がいいですよ

間違いだったとしても、そういう記憶があるってことだけは、伝えておいた方がいいんじゃないです?」

「そうなんだけどね…」と木村は言ったが、あまりそうする気はなさそうに見える


瑠璃もあまり強くは言えず、木村が口を開くまで黙っていた







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