甘い罠
あの社長とは、倉の花には行っていない

一緒に酒を呑んだ記憶自体ないのだ


「え…

社長とは、倉の花は行ってないだろ(笑)」

最初は、田崎が勘違いしていると思った


「栄光商社の野崎社長…のことですよね?」

田崎はしばらく沈黙したが、確認するように聞き返した


田崎とは、今回の取引で初めて一緒にタッグを組んだ

田崎は28歳になるが、中途採用で二年ほど前に入社してきた
最近仕事も一人前になってきたので、大手の取引を、木村と組ませやらせてみようと課長が言い出したのだった

だから、木村の記憶の中では、野崎社長はもちろん、田崎も倉の花へ連れて行った記憶はなかった


「田崎、お前…倉の花に行ったことあったんだっけ?」と木村が聞くと、田崎は笑いながら「何言ってんすか(笑)先々週、木村さんが連れてってくれたんじゃないすか。

野崎社長も一緒に…」
と言った

「え?
先々週?」

そんなに最近、倉の花へは行っていないはずだ





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