ヘタレな彼氏と強気な彼女
「なんてね、そんなバカなことあるわけないか」
自分でつっこんだ時、ちょうどチャイムが鳴る。
「西村さーん、宅配でーす!」
「あ、僕が出るよ」
雑巾を絞っていた間に一輝がパタパタと玄関へ走った。
まあ、でもあの時の一輝、ちょっとはかっこよかったかも、なんて。
一人思い出してから、不吉な予感がふとよぎる。
「え、宅配……?」
あわてて走っていくと、既に宅配のお兄さんは帰った後で。
「見てみて~千歳! パーティー衣装みたい。ほら、似合う? これ千歳が注文したの?」
はおった黒いマントをぴらりん、と翻しながら一輝が笑っている。
「え、ちょっと待って――何よこれ?」
一輝が開けた段ボール箱には、顧客感謝キャンペーンの文字と、あれほど探してもみつからなかった、あの健康食品会社の名前。
隙間から覗いている紙を引っ張り出すと、そこにあったのはたった二行の説明書き。
「セクシードラキュラマント……これを着た男性は、いつもよりお色気十倍増し。きっと素敵な夜が過ごせるでしょう――!?」
読んで悲鳴を上げる私の声など、リビングでふざけてくるくる回っている一輝には聞こえていない。
そんな、まさか――血の気が引いていく私に、ふと動きを止めた一輝が近づいてくる。
「千歳……おいで」
差し伸べられた手。いつの間にか、はだけた胸元。私を見つめる眼差しは濡れたように潤んでいて。
「勘弁してよ、もうー!!」
叫んだ声は二人だけの部屋に響いて、私だけのドラキュラがにんまり笑った。
自分でつっこんだ時、ちょうどチャイムが鳴る。
「西村さーん、宅配でーす!」
「あ、僕が出るよ」
雑巾を絞っていた間に一輝がパタパタと玄関へ走った。
まあ、でもあの時の一輝、ちょっとはかっこよかったかも、なんて。
一人思い出してから、不吉な予感がふとよぎる。
「え、宅配……?」
あわてて走っていくと、既に宅配のお兄さんは帰った後で。
「見てみて~千歳! パーティー衣装みたい。ほら、似合う? これ千歳が注文したの?」
はおった黒いマントをぴらりん、と翻しながら一輝が笑っている。
「え、ちょっと待って――何よこれ?」
一輝が開けた段ボール箱には、顧客感謝キャンペーンの文字と、あれほど探してもみつからなかった、あの健康食品会社の名前。
隙間から覗いている紙を引っ張り出すと、そこにあったのはたった二行の説明書き。
「セクシードラキュラマント……これを着た男性は、いつもよりお色気十倍増し。きっと素敵な夜が過ごせるでしょう――!?」
読んで悲鳴を上げる私の声など、リビングでふざけてくるくる回っている一輝には聞こえていない。
そんな、まさか――血の気が引いていく私に、ふと動きを止めた一輝が近づいてくる。
「千歳……おいで」
差し伸べられた手。いつの間にか、はだけた胸元。私を見つめる眼差しは濡れたように潤んでいて。
「勘弁してよ、もうー!!」
叫んだ声は二人だけの部屋に響いて、私だけのドラキュラがにんまり笑った。

