この窓を飛び越えて…
「クスクス…面白いね、莉桜って呼んでいい?」
「あっ、はい」
「敬語じゃなくていいよ。あたしは沖田千恭[おきた ちゆき]宜しくね」
「あ、チユキちゃんですね!」
「そう、千にこういう恭を書いて千恭なの。呼び捨てで構わないんだけど…、まっ許容範囲だね。てかっ、敬語いらないから!」
可愛いらしいペンケースから出したシャーペンで、紙に『恭』という文字がかかれた。
「わかり…った…」
それを頭にたたき付けながらだったからか、わたしは危うく言い間違えそうになる。
カタコとになりながら喋るわたしに千恭ちゃんはもっと笑い出す。
なんだか香葉を見ているようで心が温かくなっていった。
急に現れた安心感が、緊張を解していく。
「最後はうちのクラスの…ほらっ、一翔だよ」
千恭ちゃんが腕を触れば、顔だけ上げて名前を言った。
「土井一翔」
「しっかり挨拶しなさいよ…」
千恭ちゃんが呆れた様子だ。
“窓辺の人”がいかにこういう場所に慣れてないかが手にとるようにわかってしまう。
「そうか、イチトっていうのか!」
原田くんは早速話しかけ始めた。
「どんな字??」
「……漢数字の一に、翔るの翔」