秘書室の言えなかった言葉
「俺が一番に言いたかったのに」


そう言って、掴んでいた腕を離したかと思うと、私の手をぎゅっと握る。


「ちょっ……、人が見ているよ」


耳元で囁かれた事と、周りに後輩達がいる前で手を繋いでいる事が恥ずかしくて、うろたえる。

そんな私を気にする事なく


「別に見られてもいいよ」


そう言って、英治は繋いだ手を離す事なく、席につく。

その時、チラッと後輩達の方を見ると……

声は聞こえてこないけど、見るからに、私と英治を見て、さっきみたいに騒いでいる感じがわかる。

やっぱり恥ずかしい私は、後輩達から視線を外し、まっすぐ前を向く。

そりゃ、英治と二人で出掛けたりする時は手を繋ぐし、後輩達には私達の関係バレていたけど……

さすがに周りに会社の人達がいる所で手を繋ぐのは、やっぱり恥ずかしい。

そう思うのは私だけらしく、英治はというと……

隣に座る社長と普通に話している。


そして、時間になり、挙式が始まる。

純白のドレスに身を包んだ理生ちゃんは、本当に綺麗だった。

私もいつか……

そう思いながら、英治をチラッと見る。

私の視線に気付いた英治は、優しく微笑んでくれた。

英治も同じ気持ちだったらいいな――…


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