秘書室の言えなかった言葉

“園田は俺の事を同僚としか思っていない”

ずっと、そう思っていたから。

だから、信じられなかったんだ。

だけど、


「えっ……、えっとぉ……、何のこと？」


とぼける園田。

多分、しつこく聞いても、またとぼけられる。

それは避けたい。

だって、とぼけられたら、俺の気持ちも言えなくなりそうだから。


「じゃぁ、質問を変える。……園田は、何で泣いていたんだ？」


そう言って、俺はそっと園田の頬に触れ、涙を拭う。

触れた指先から感じる園田の頬は、思った以上に柔らかく、俺の心臓はドキドキと早くなる。

すると、少しおさまっていた園田の涙が、また溢れ出してくる。


なぁ、なんで。

なんで、そんなに泣いているんだよ……


「泣くなよ」


秘書室の絨毯に膝を着いている俺は、そう言って園田の腕を引っ張る。

そして、椅子に座っていた園田はバランスを崩し、そのまま俺の腕の中に。

俺は抱きしめる腕の力を強めながら


「なぁ……、何で、泣いているんだよ」


とぼけられたけど、俺の事を好きって言ってくれた園田。

だけど、なんでそんなに泣いているんだよ……