秘書室の言えなかった言葉
だけど、園田は俺の腕の中で固まったまま、何も言わない。

不安になった俺は、園田の身体を少し離し


「さっき園田が一人で言っていた言葉って……、本当?」


俺は園田の髪に指を絡ませ、そして、園田の顔を覗き込みながら聞く。

潤んだ目で俺をじっと見ているが、園田はやっぱり何も言わない。

俺は緊張して、直接的な言葉をなかなか言えないでいたけど、はっきり言わなきゃ伝わらないよな。


「俺……、ずっと園田の事が好きだった。なぁ、俺の彼女になって?」


園田をまっすぐ見つめ、はっきりと気持ちを言葉にする。


「えっと……、倉木の好きな人って、私なの?」

「あぁ、俺が好きなのは、園田だよ」


視線を逸らされないように、園田の頬にそっと触れる。


「うそ、だ……」


そして、園田の瞳からは、また涙が溢れてくる。

その涙を指で拭い


「本当だよ。俺が好きなのは園田。俺が付き合いたいのは……、一緒に居たいのは、園田、お前だけ」


そして、園田から目を逸らさずに


「ずっと俺の側に居てほしい」


俺の気持ちをはっきりと伝えた。


「私も……、倉木が好き。ずっと、ずっと好きだった」


ずっと聞きたかった言葉。

それをちゃんと、はっきり言ってくれた園田を、俺はまた力強く抱きしめる。


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