秘書室の言えなかった言葉
「倉木、大丈夫だって。社長、仕事中と周りに他の人が居る時は、ちゃんと苗字で呼んでいるんだから」


だから、そういう問題じゃないのだが、知里も真人の味方をしているし……

まぁ、真人も今はこんなお気楽な感じだけど、仕事になると、ちゃんとしてくれるのはわかっているのだけど。


はぁ……


心の中でため息を吐いていると


「そんな事よりさ、なんで園田さんも佐伯さんの事を知っていたの?」


真人が知里に聞いていた。

言われてみれば、そうだ。

俺は佐伯さんと同じ課だったけど、知里はずっと秘書課。

営業課の時、あまり秘書課と接点は無かった気がするのだけど……

現に、俺も知里と同期だし面識はあったが、俺が秘書課に来るまで、あまり話した事はなかった。


「えっ?あっ、あの……、前に秘書課に居た先輩が、佐伯さんと同期で……。それで、たまに一緒に食事に行ったりしていて……」


へぇー、そうだったんだ。

それは、初めて聞いた。


「それって、佐伯さんと二人で?」

「えっ?あっ……えーっとぉ……、先輩とか、他にも人居たよ?」


知里は何故か少し慌てていた。

それが気になって


「本当に?」


知里の目をまっすぐ見つめ、聞く。


「……う、うん」


コクン、コクンと頷く知里。


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