秘書室の言えなかった言葉
“また後で”

って、どういう事だよ。

ってか、何、さりげなく触ってんだよ!!


今の俺には“余裕”なんて言葉はない。

ちょっとした事だけど、知里に対する佐伯さんの態度、言葉、それに知里の無防備さにますます俺は苛立つ。

だけど、佐伯さんは先輩。

それに、上司。

苛立った態度なんて出せるわけがないから、必死に堪える。


佐伯さんと空いている席に移動する時、知里を見ると、すごく不安そうな顔をしていた。


だから、この間から何なんだ?

不安があるのなら言って欲しい。

俺ってそんなに頼りないか?


苛立ちと頼って貰えない事への落ち込み。

俺の心の中は、複雑な感情でいっぱいになる。


知里の座っている所から、少し離れた場所に座る佐伯さんと俺。

佐伯さんの大阪にいた時の話や俺の仕事の話をしていた。

その話も俺の苛立ちも少し落ち着いた時、


「知里って、やっぱり可愛いよな」


佐伯さんは、離れた所で飲んでいる知里を見ながら、ふいに呟く。


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