秘書室の言えなかった言葉
「えっ?」


今、“知里”って言わなかったか?


佐伯さんは、仕事中は当たり前だけど知里の事を“園田さん”と呼んでいた。

だから、佐伯さんが“知里”って言った事に驚いた。

それと同時に、俺はすごく嫌な予感がした。

だって、佐伯さんは知里の事を「可愛い」と今、言ったから。


もしかして、佐伯さん、知里の事……


もし、そうだとしても知里の事を手放す気なんて、全く無い。

そんな事を考えている俺を気にする事なく、佐伯さんは続ける。


「知里、今日、かなり飲んでいるよなぁ」


あまり飲めないのに、今日はかなり飲んでいるのは事実だけど。


「あれだけ酔っていたら、一人で帰れないだろうな」


大丈夫です。

俺が連れて帰りますから。


佐伯さんの言葉にイライラしながら、心の中で答える。


すると、


「あの状態なら警戒されて、嫌がられたとしても拒む力ないだろうし、無理矢理にでも連れて帰れるかな」

「はぁっ!?」


佐伯さんの意味のわからない言葉に、つい大きな声が出てしまった。


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