秘書室の言えなかった言葉
秘書室に戻った私。

みんなはもう帰ったらしく、秘書室には私一人。


自分のデスクに座ると、こらえていた涙が溢れ出してきた。


私は勝手に

“自分は特別なんじゃないか”

と、心のどこかで思っていた。

倉木にそんな事を言われたわけでもないのに。


少し自惚れていた私は、告白現場を見る度に、不安になりながらも心のどこかで、

“いつものように断る”

そう思って、安心していた部分はあった。

倉木が断るのは、わかっていたから。

告白する勇気のない私は、今の状態に甘えていたんだ。

それに、

“倉木には好きな人がいる”

この噂も、周りの社員は私の事を指して言っているって事を、本当は知っていた。

だって、倉木が普通に話すのも、自然な笑顔を向けてくれるのも、女性社員では私だけだったから。

だけど、それは、ただ仕事上、一緒に居る時間が長いから。

倉木は私に打ち解けて、笑顔を見せてくれるようになっただけなんだ。

そんなの、よく考えたらわかる事なのにね?

私、なに勝手に自分の都合のいいように、勘違いをしていたのだろう……


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