秘書室の言えなかった言葉
はぁ……

本当は、無理矢理聞き出すのじゃなく、知里から話して欲しい。

かと言って、正直に知里が話してくれて

“今も佐伯さんの事が好き”

なんて言われたら……

そんな事を考えると、その事を聞くのが怖くなる。


俺は、一生、知里の事を離すつもりはない。

それくらい惚れている。

でも、この今の状況。

ちゃんと話をした方がいいのは、わかっているのだけど。

“知里の口から聞きたい”そう思っているのだけど。

知里の態度、寝言で“せいじ”と呼んだ事。

それもあり、知里の本心を聞くのが怖い。


結局、その日は、知里に会わないよう、夜遅くに帰った――…





次の日から、毎日、知里から着信やメールがあった。

だけど、俺はそれを無視した。

と言うより、出られなかった。

知里の口から佐伯さんの事が聞きたい

そう思っているのだけど、まだ知里の本心を聞く心構えが出来ていないんだ。

そして、知里と話さないまま、週末を迎える。


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