秘書室の言えなかった言葉
佐伯さんに抱きしめられ、嫌がる知里の姿。

嫌がる知里を見た瞬間、俺は頭に血が上る。

二人の元に走り出そうとする俺の前に、スッと手を出し


「何やってんの?」


真人は俺の前に出る。

そして、小声で


「お前は今行くな。とりあえず、少し落ち着け」


そう言って二人の元へ。

きっと真人はわかったのだと思う。

目の前には嫌がっている知里の姿。

あのまま真人に止められなかったら、俺は佐伯さんに殴り掛かっていた。

俺は三人の様子をドアの所から見ている。

だけど、俺の苛立ちはおさまらない。


「あっ、そうだ。会社の前で、“佐伯専務の彼女が待っている”って連絡がありましたよ」


“佐伯専務の彼女”?

はぁっ!?

彼女がいるのに、知里とよりを戻したいって言っていたのか?


そんないい加減な佐伯さんに、ますます怒りを覚える。


< 95 / 131 >

この作品をシェア

pagetop