秘書室の言えなかった言葉
慌ててこの場から立ち去ろうとする佐伯さんを


「あっ、そうだ」


引き止めている真人。

俺は、その光景を見ながら、佐伯さんに掴み掛かりたい気持ちを必死に抑える。

真人は佐伯さんの側へ行き


「今後の事は考えますから」


冷たくそう言った。

そして、佐伯さんは俺とすれ違う時に“チッ”と舌打ちをして、秘書室を出て行く。

そんな佐伯さんの態度に俺は我慢が出来なくなり


「佐伯さん!」


廊下で佐伯さんを引き止める。

そして、佐伯さんの胸倉を掴み


「金輪際、知里に手を出さないで下さい」


佐伯さんを睨みながら言い放つ。

胸倉を掴んでいる俺の手を払いのけ


「知里は今、俺の秘書だろ?チャンスはいくらでもあるよ」


“フッ”と笑い、佐伯さんは自信満々に言い、歩いて行った――…


< 96 / 131 >

この作品をシェア

pagetop