抹茶な風に誘われて。
「あのね、二股ってのは二人同時に内緒で付き合ってるってことで、修羅場ってのはそういう二人と彼氏が鉢合わせしちゃったりすることを言うわけ。それでアゲ嬢ってのは、まあ――とにかく滅茶苦茶見た目が派手で、キャバ嬢……えっと、キャバクラとか夜の店で働いてる女の子みたいな外見だってことよ」

「はあ――そ、そうなんだね。ごめんね、咲ちゃん。いつも助けてくれてありがとう」

 さっきトイレに行く前の女の子たちの目線を思い出して、また情けなくなる。

『何なの? この子』

 そんな顔で見られるのは初めてじゃない。

 みんなが色々な話題で盛り上がってる時、私の発言のせいで水を差してしまったり、しらけさせてしまったりすることは昔からよくあるから。

 咲ちゃんみたいに優しく教えてくれたり、フォローしてくれる子のほうが少なくて、大抵の人はあからさまに嫌そうな態度をとるか、適当に笑って流すか――ひどい場合は、無視されたりすることもあった。

 ――でも自分のせいだから、しょうがないよね。

 私にはわからないけど、どうも他の子とは少しずれているらしい。

 それを『天然』だって言って、笑ってくれる数少ない人たちがいることには救われるけど――。

 いつの間にかあの賑やかで優しい茶道教室のメンバーを思い出して、ほんの少しだけ胸があたたかくなった。

 そんな私を否定しない、あのグレーの瞳のことも。
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