抹茶な風に誘われて。
「まあまあ、そんなにへこまないへこまない! あたしはさ、結構うちの母が天然入ってる人だから慣れてるっていうか、とにかくかをるちゃんはそのままでいいんだよ。妙に汚れたりしないで、いつまでも純粋なままいてよね」

 よしよし、と頭を撫でるふりをしてくれた咲ちゃんに、昨夜話そうと決心したことを思い出す。

 地元から集まってる子たちの多いこの高校に入って、慣れることができないでいた私に初めて話しかけてくれた、大切なお友達。

 私にとって今唯一の親友といえる子だから、咲ちゃんにはちゃんとわかってほしいんだ。

 優月ちゃんも普段は結構面倒見がよくって、明るいいい子だから、話すつもりだった。

 でもちょうどトイレから戻ってきた優月ちゃんはまだ目が腫れていて、お化粧を直しても顔色が悪い。

 ――こんな時に言うことじゃないもんね。

 いくら少しずれている自分とはいえ、それぐらいの常識はわかる。

 やっぱり話をするのは今度、また機会を伺ってからにしよう。

 一人頷いていたらちょうど担任の先生が入ってきて、さっき始業式で校長先生が話していたのと同じようなお話を始めた。

 有意義な新学期になるよう、一人一人目標を持ち、過ごしてください――そんなまとめの後は掃除の時間で、あっという間に新学期初日は過ぎていったのだった。
 
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