抹茶な風に誘われて。
 お茶を点てながら、静さんはこう言ってたらしい。

『野良猫に懐かれて鬱陶しい』って。

 俺はうるさいガキが一番嫌いなんだ、とも言ってたとか。

 ――私ったら、笑ったりしたら優月ちゃんに失礼だよね。

 どうしよう、どうやって打ち明ければいいんだろう。

 亀元さんの話でも、優月ちゃんの熱心ぶりは相当らしくて、例の茶道クラスにはもちろん、その後家まで押しかけそうな勢いだったみたい。

「けどさ、これは早めに本当のこと話しちゃったほうがいいかもよ? 静に惚れこんじゃった女の子が思いつめて、やばいことになったりすること、結構あったからさ」

「そ、そうなんですか――」

「それにしても身元ばれちゃったのは痛かったねー。どっからばれたのかな? その子静の名前やら過去まで知ってたんでしょ?」

 最後まで首を傾げていた亀元さんの疑問は私と同じものだったんだけど、結局その日答えは出ないまま、亀元さんは店内に置いてあった花から適当に注文した花束を持って、お店に戻って行った。

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