抹茶な風に誘われて。
 それから亀元さんが話してくれたのは、聞いてみればなんだ、と思うような真相だった。

 静さんがあの時優月ちゃんたちをおさめたのは、決して自分から望んでやったことじゃなくて、香織さんの頼みで渋々だったってこと。

 優月ちゃんとけんかをしてたあの女の人は、香織さんと同じお店で働いてる人で、ちょうどライバル店と競争中だったり、結構売れっ子の人だったからこれが原因でやめられたりしたら困る、とかそういう事情で、お店の古株である香織さんにオーナーさんがなんとかしろと命じたらしい。

 ちょうど用事でお店に来ていた静さんを、半ば強引に説得して香織さんが行かせた。

「な、なんだ……そうだったんですね」

 自分でもわかるぐらいにほっとしてしまっていて、気恥ずかしくなる。

 でも正直なところ、嬉しいのが本音だった。

「そりゃそうだよー静は面倒なことが一番嫌いなんだから、自分からそんな女同士のいざこざ静めに行くわけないじゃん! 香織さんが限定上生菓子セットおごるからって頼み込んだらしいよ」

 生菓子程度の代価でやるぐらい、静にとっちゃどうでもいいことなんだよ、という亀元さんの言葉で喜んでしまってから、そんな自分を優月ちゃんが知ったらどう思うんだろう、なんていう不安がまた蘇る。

「それで――苦虫噛み潰した顔っていうのは?」

「ああ、そうそう、静が香織さんのおかげで面倒くさいことになったって昨日すっげー嫌そうに文句言ってたからさ」

「文句、ですか?」

「うん。ちょっと抹茶飲みたくなって店終わってから押しかけたらさー、変な女子高生が付きまとってきて迷惑だって」

 静さんの口調まで真似をしながら語る亀元さんに、思わず吹き出してしまう。
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