抹茶な風に誘われて。
「かくいうあたしのほうは、まだまだ別れた奥さんと子供とは断絶状態だけどねー。離婚してからもう八年になるけど、許してくれないの。さびしくってこっそり子供の様子見に行っちゃったりしてね。まあ、自分の趣味が原因でそうなったわけだから、自業自得ってことかしら。しょうがないわよね、本当」

「ハナコさん……」

「だからみんな静ちゃんとお父様の和解は喜んでるのよ? どっか自分たちと重ねちゃうのかも。香織なんか家出してる間にご両親亡くしてるから、余計よね」

 お汁粉の後にまた一服している香織さんは、こちらの話が聞こえたのか眉を寄せた。

「しみったれた話新年からしないでくれる? ハナコさん。ただでさえいわくつきの夜の住人たちばっかで華やかさが足りないってのに」

「そーだよハナコさーん。まあ別に隠すつもりなんてないしいいんだけど。よっしゃ、足りない華やかさは甘さでカバーしようぜー! ほい、お土産の紅福」

「あらっ、やっぱお伊勢さんといえばこれよねえ。早速開けちゃいましょ」

「えー? 汁粉のあとに紅福行っちゃうわけ?」

「そう言いながら香織さんだって目―輝いてるじゃん。行っちゃえ行っちゃえ!」

 楽しそうに三人が亀元さんの持参した菓子折りを開けたその時、玄関から再びチャイムが鳴った。

「あっけおめー! お邪魔しまーっすっ!」

 誰かと似たような挨拶で入ってきたのは優月ちゃんで、すぐ後から「お、お邪魔します……」と遠慮がちに咲ちゃんも姿を見せる。

 赤と黄色の艶やかな振袖を見て、亀元さんが声を上げた。

「うおーすっげー可愛いじゃん咲ちゃん! めちゃ似合ってるよー。やっぱ女の子は振袖だよなー」

 同じような言葉をクリスマスにはワンピースだと言っていたような気がしたけれど、それよりも言葉の前半に反応したのは優月ちゃんだった。

「ちょっと、なんであたしは素無視なのよ! 同じ振袖なんだから平等に褒めるべきでしょーが!」

「うるせーこの性格ブス! お前はもともと女の子扱いしてねえっつうの」
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