抹茶な風に誘われて。
「……そういうわけで、卒業したらフラワー藤田で正式に雇ってもらうことに決めてたの」

 言い終えると、できるだけ心配をかけないよう笑ってみせる。

 両親もいない私を住み込みバイトとして置いてくれている藤田のお二人にこれ以上迷惑をかけるつもりもない。

 園長先生の知り合いだった二人のおかげで私は施設を出て高校へ通うことができた。

 奨学金があるとはいえ、やはり生活に必要なあれこれを支えてもらっているのも確か。

 修学旅行のこともそうだし、進学するよりも働いて恩を返したかったのだ。

「もともと勉強はそんなに好きでもないし、ね」

 湿っぽくなりそうな空気を和ませたかったのに、そう締めくくってもみんなは笑いもしなかった。

「――かをるちゃんのことだからそんな気はしてたんだけど、やっぱり一緒に大学生になりたかったな……」

 ぽつりと呟いた咲ちゃんが、瞳を潤ませる。

 すぐに目をごしごしこすって、「ごめんね」と泣き笑いを見せられてしまっては、私もうまく笑顔が作れなかった。

「まあいいじゃん! 別に世の中大事なのは学歴だけじゃないって! ねっ」

「万年最下位ホストのあんたが言うなっての!」

 牙を剥く犬のように即座に言い返す優月ちゃんを、咲ちゃんがなだめている。

「……お前がなりたいのは、花屋なのか?」

 今まで沈黙を守っていた静さんが、突然そう切り出したことでみんなが静まり返った。

 切り込むようなグレーの眼差しに、ドキリとする。

「――それは」

 正直な気持ちは、喉の奥で固まって声にできない。

 俯いた私をじっと見つめていた静さんは、ふっと表情をゆるめた。
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