抹茶な風に誘われて。
 青少年会館、多目的ルーム――ハナコさんのメモ用紙にあった場所は、隣町に新設されたばかりの施設の一階にあった。

 館内図を見たら、多目的と名のつく部屋はいくつかあったけれど、受付で静さんの名前を出して訊ねたら、係の人がすぐに教えてくれたのは新しい畳の良い香りがする和室だった。

「いやあ、茶道の先生は結構いらっしゃるんですけどね。外国人相手の文化交流を、というテーマだったんで、ちょうどいい方を探すのは大変でしたよ。でもぴったりな先生に来ていただけたんですよ、ほら。あなたも茶道に興味がおありで? いいですよ、見学されても。どうぞ、ここから見えますから」

 よく喋る係のおじさんに案内され、横の窓を示される。ちょうど丸くガラスがはめられていて、そこから中が見えるようになっていた。

「英語で説明とかされてますからねーわたしにゃさっぱりなんですけど、何でも家元とかになっていいくらい精通した方だそうですよ。授業もわかりやすいらしくて、始まったばっかりでも人気のクラスなんですよ。それにほら、先生かなりイケメンだしね」

 ははは、とお腹をさすりながら笑ったおじさんは去っていき、その言葉に思わず赤くなってしまった頬をあおいで、息を整える。

そうっと覗き込んだガラスの向こうに、静さんの横顔を見つけた途端、胸がどくんと高鳴った。

 ざっと十五人以上はいる人たちはみんな外国人で、ほとんどは留学生のようだった。

 壁のプレートに書かれたクラス名は、夏休み特別交流、茶道教室。

 講師、一条静、の文字を目で追いながら、私はさっきのおじさんの言葉を思い返していた。

 
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