「愛してる」、その続きを君に
「ここでいいから」
「なんで怒ってんだよ」
前髪の下りた彼が、鎧も何もつけていない無防備な姿に見える。
「信ちゃん、私ね」
好きだったんだよ、ずっと。
そう言えたら、そう素直になれたら…と彼女は思う。
「私ね、進学はしないことにしたんだ。豊浜に残る、ずっとここにいる」
夏海は微笑んだ。
しかし、それを受け止める信太郎の瞳が真っ直ぐすぎて、彼女の一度は緩んだ口元が真一文字に結ばれる。
普段のお気楽で、つかみどころのない彼が今は嘘のようだ。
「二代目、武ばぁにでもなるつもりか?」
信太郎の一言に夏海は吹き出した。
「マジな顔して冗談言わないでよ」
一通り声を上げて笑うと、ふいにうつむき「じゃあ私はナツばぁになるんだね。それもいいかもね」ととぎれとぎれにそう言った。
そんな夏海の目からポロポロ涙がこぼれ落ちるのを目の当たりにして、信太郎は眉をひそめた。
「どした?今日のおまえ、なんか変…」
「もうここまででいいから!」
それ以上近付かないで。
おばあちゃんを亡くして、その上、進学も夢も何もない喪失感でいっぱいのこんな私に優しくしないで、夏海は心の中で叫んだ。
恋人と別れた信太郎に甘えてしまおう、そんな気持ちが心の奥底にある。
今このまま彼と一緒にいると、その感情がむくむくと湧き上がってきて、せっかく築いた心の堰を切ってしまう。