光を背負う、僕ら。―第2楽章―



小春ちゃんは膝の上に置いてある手元を見つめながら、ゆっくりと話してくれた。




「……いつだったかな。ある時から伸一の様子が変わったの。あたしには変わらず優しくしてくれたけど、ちょっと違和感があるみたいな。たぶん……好きな人が出来たんだろうね。あたしへの優しさからくる好きって感情じゃなくて、本当の好きって感情をある子に抱いたんだと思う。けど伸一は、自分の気持ちの変化に気付いてなかった。あたしと付き合ってる状態だから、その感情は気のせいだって思い込んでるみたいだったの。……でも、分かっちゃった。伸一はあたしじゃない別の子を、本気で好きなんだって。その子を見てるときの伸一の表情で確信しちゃったの」




日が沈んだのか、それとも雲に隠されただけなのか。

部屋が少しだけ暗くなる。



電気がまだ点いていない部屋に小春ちゃんの落ち着いた声が響くたびに、あたしの緊張だけが高まっていった。

まさかという疑惑が、頭を支配する。




「気付いたとき、ショックだった。伸一があたしを好きで付き合ってくれたんじゃないことは分かってたけど、やっぱり自分以外の人に好意が向いてるのはつらいし……」


「…………」


「それに伸一が好きな人が、伸一を好きだってことにも。二人が両思いだってことにも気付いちゃったから、すごく悲しかった。……だからあたし、意地の悪いことしちゃって。伸一が他の人を好きだって気付いたときに解放してあげれば良かったんだけど、出来なかった。伸一は優しさであたしと付き合ってるから、伸一から別れを切り出せない。そのことを分かってて、利用してしまった。あたしが別れてって頼まなければ、伸一はずっと傍にいてくれるからって」



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