光を背負う、僕ら。―第2楽章―
「小春ちゃんは悪くないから……。だから、謝らないで?」
念を押すように、もう一度そう言った。
涙は出ていない。
でも声はか細く震えていて、泣いているみたいだ。
「……やっぱり、佐奈ちゃんは優しいね」
ずっと苦笑いばかりしていた小春ちゃんが、嬉しそうに柔らかく微笑んだ。
「佐奈ちゃんが、優しくて良い子で良かった。だから伸一も……」
「小春ちゃん……」
確実にさっきまでより小春ちゃんの表情は明るくなっているはずなのに、気持ちが晴れていないことは見て当然のように分かった。
それに気付いて何か言おうとしたけれど、精一杯の明るい声に止められてしまう。
「あのね、別れようって言ってきたのは伸一だったんだよ?あたしが伸一から離れなきゃって思って行動する前に、伸一が先に動いたの。正直びっくりした。まさか伸一に先に別れを切り出されるとは思ってなかったから。でも、それぐらい本気で好きになった子がいるんだよ」
小春ちゃんが笑うたびに、伸一の気持ちの断片に触れるたびに、じわりと温かいものが心の中に沁み込んでいく。
「……ねぇ、佐奈ちゃん。今でも伸一のこと好き?」
突然に、躊躇いがちに尋ねられる。
でも瞳があたしを試しているというか、確かめているみたいに鋭かった。
その問いかけへの答えは、とっくの前から決まっている。