光を背負う、僕ら。―第2楽章―



「麻木も初詣でに来てたんだな。まさか会うとは思ってなかったからびっくりした」


「あ、あたしも……。まさか、ここで会うなんて」




伸一は普通に話しかけてくれるけど、あたしはおどおどした感じでしか言葉を返せない。



視線がブーツの爪先を追ってしまう。



だって、こうやって顔を合わせて話すのは久しぶり。


しかも学校ですら滅多に言葉を交わさない伸一と、こうやって外で面と向かって話す機会は今まであまりなかった。


だからこの状況には何だか違和感があってまだ慣れない。



おまけに周りに明日美達がいるという状況で、余計に緊張を感じてしまう。



全員伸一とのことを知っているメンバーだから別に隠すようなこともないけれど、こう堂々と話しかけられると照れてしまうんだ。




「あっ、まだちゃんと言ってなかったな」


「えっ?」


「明けましておめでとう。これからもよろしくな!」


「あっ、明けましておめでとう!……こちらこそよろしくね!」




メールではなくて、お互いの声で伝える。


たったそれだけのことなのに、伸一が「これからも」と笑顔で言ってくれるだけで、すぐに嬉しくなってしまうんだ。




「ねぇねぇ、佐藤君って真藤君と二人で来たの?」




会話の間のタイミングを見計らって明日美が尋ねる。



何故かその際にあたしと伸一の顔を見比べて、ニヤニヤと笑った。



何か余計なことを考えていそうで怖いんだけど……。



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