百物語

┣9本目 トンネル

嘘の声ッスかぁ…。

確かに知らぬが仏って事もあるけど羨ましいッス。

怖い話…じゃあ、オレが話します。


ほら、オレ見るからにチャラいじゃないッスかぁ?

だからよく仲間と酒とか持ち込んで夜中にドライブとかしてバカしてたんッスよー。

未成年だったんッスけど。

である時、女のコ連れて心霊スポットに行こうって話しになったんッスよー。

まぁ、定番ッスよね。夜のドライブとかの。


もちろん信じてなかったし、見たって話があっても、そんなのただの怖がりの奴等が見間違えただけだって風にしか考えてなかったんッスよねー。


本当にバカでしたよ、この頃は。


行った心霊スポットはトンネルでよく事故が多発してるところだったんッスよ。

これまた定番な心霊スポットッス。

オレ等はそこに着いて、トンネルの外に車止めて、中に入って、酔ってた勢いもあり騒いでたんッスよねー。


「幽霊ぃ?いんなら出てきてみろや!ギャハハっ!」

とか大騒ぎッスよね。


女のコ達も「えー、やだぁ。こわいー」とか言いながら自分を守ってと言わんばかりに気に入ったオトコの側に寄り添ったりして。

その内、そこらへんに供えてあった花を蹴っ飛ばしたり、それに小便したりとまぁ、最悪な事してたんッスよ。

……あっ、オレはしてないッスよ?

騒いではいましたけど。

寧ろ、「それはまずいだろ」って思って、あいつらが違うところ行ってる内に結構仲が良かったダチと花とか直しときました。

そしたら、ふっと冷たい風が吹いたんッスよねー。

真夜中とはいえ夏ッスよ?

ただの涼しいとかの風じゃなく、寒い風でした。


「おぉ〜?ついに出ちゃいましたかぁ!?」
「や〜ん、怖いー」


そー言って、他の奴等は楽しんでましたけど、オレはなんだか寒気がしたんッスよね。

まぁ、でもまだこの時は怖くなかったッス。


…でも、さっき一緒に花とか直したダチが青ざめた顔してたんッスよ。

オレが「どしたぁ?」って聞くと「い…今、あそこで何か動かなかったか?」ってトンネルの先を指指したんッス。

トンネルの先を見てみると、なんか薄暗いんッスよね。

只でさえ、オレンジのライトだから暗く感じるのに。

ただ、正直よく見えなかったから「何が?」って言ったんッスけどね。


そしたら「どーしたぁ?びびってんのかよー」と1番大騒ぎしてた奴がきたんッスよ。

「いや、コイツがあそこで何か動かなかったかだって」

「あん?何処だよ」

でオレの指差す方向にそいつ少し歩いて目をこらしてたんッスけど、やっぱり何も見えない。

でも………

「なんだよ何もいねぇじゃん」

って振り返ったそいつの肩から…多分数m先くらいの距離だと思うんッスけど、髪の長い白のワンピース着た女が立ってたんッス。
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